草加光明寺の掲示板に毎月掲出している言葉をご紹介いたします。取り上げる言葉とその解説は、『お寺の掲示板』(江田智昭著・新潮社)等を参考にさせていただいております。
「拍手されるより拍手したほうがずっと心が豊かになる」 日本映画界の大スターである高倉健さんは数多くの出演作品に加えて、多くの名言も残されています。今回のご紹介する「拍手されるより拍手した方がずっと心が豊かになる」もその一つです。 『お寺の掲示板』の江田さんはこの言葉を実践している高倉健さんの姿を、テレビで見かけたことがあるそうです。ナインティナインの岡村隆史さんが主演した作品が日本アカデミー賞の話題賞を受賞した際、壇上で岡村さんが「将来は高倉健さんみたいな俳優になりたいです」と発言したところ、会場の空気が凍り付いたとのこと。 そのとき、会場にいた高倉健さんご自身がひとり立ち上がり、大きな拍手を送ったそうです。これで会場の空気がぐっと和やかになり、岡村さんは救われました。江田さんは高倉健さんがこのように思いやりにあふれる行動に出られたのは、上記の言葉が常に心の中にあるからではないかと振り返ります。 江田さんは続いて、高倉健さんの生涯の座右の銘、「往く道は精進にして、忍びて終わり悔いなし」をご紹介します。
この言葉は『仏説無量寿経』の中の「我行精進 忍終不悔」という言葉に由来しています。 「たとえどんな苦難にこの身を沈めても、さとりを求めて耐え忍び、修行に励んで決して悔いることはない」という法蔵菩薩の誓いの言葉であり、法蔵菩薩は長きにわたる修行を経て、阿弥陀如来となられました。 これは「すべての人々を救うためにはどんな苦難をも耐え忍ぶ」という、非常に重たい覚悟がこもった言葉といえます。
(『お寺の掲示板 諸法無我』P71より)
苦難の中を耐え忍び、人生を生き抜かれた高倉健さんの優しさや覚悟が伝わってくるようです。「我行精進 忍終不悔」という言葉は、「讃仏偈」の末尾に出てまいります。お経に親しむ機会がございましたら、思い起こしていただければ幸いです。
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